皮膚疾患の診かたと治療のコツ

今回の勉強会では帯状疱疹・単純疱疹と皮脂欠乏症に関しての講演がありました。

<帯状疱疹・単純疱疹>

●ヘルペスウィルスは全部で8種類存在し、その中で水泡+痛みがでてくるのは口唇ヘルペス、性器ヘルペス、帯状疱疹の3種類です。

●帯状疱疹ウィルスは水痘に罹患後体内の神経に住み着き体内に潜伏します。その後体調が悪くなり免疫力が低下したときに帯状疱疹として再発します。

●治療の基本は、できるだけ早く抗ウィルス薬を開始することです。しかし、この抗ウィルス薬はウィルスをせん滅するものではなくその数を増やさないようにする薬なので、ウィルスが増える前に抗ウィルス薬を開始することが大切です。

●今までの抗ウィルス薬は腎機能が悪化するためその使用には注意が必要でした。

●また、帯状疱疹は痛みが伴うために痛み止めが必要ですが、この痛み止めも腎機能悪化を引き起こす可能性がありました。

●最近出た新しい抗ウィルス薬は、肝臓で代謝されるため腎機能に影響を及ぼしません。また、新しい抗ウィルス薬は今までの薬剤とは違う経路でヘルペスウィルスの増殖を抑制します。

●眼周囲の水疱は他の部位とは違い目にも影響を及ぼします。眼周囲に帯状疱疹が見られたときは近くの眼科に相談してみて下さい。

<皮脂欠乏症>

●皮脂欠乏症とは、皮膚の表面の脂が減少することで皮膚の水分が減少して、乾燥を生じる病気です。

●皮膚のうるおいを保つには皮脂(皮脂腺から分泌される脂)、角質細胞間脂質(セラミド)、天然保湿因子(角質層にあるアミノ酸や塩類)が必要です。皮脂欠乏症はこれらの物質が少なくなり、皮膚が乾燥しやすくなります。

●症状は、皮膚にひび割れが出てきて痒みが強くなります。皮脂欠乏症が進み皮脂欠乏性湿疹になると夜中に目が覚めるほどにみが強くなります。

●皮脂欠乏症にならないために日常生活で気をつけることは、①熱い風呂や長風呂は避け、ナイロンタオルなどでゴシゴシ洗うことを避けましょう。手に泡をつけて皮膚をこするだけで不必要なものは皮膚表面から除去できます。②加湿器などで適度な湿度を保ち、冷暖房のきかせすぎに注意しましょう。③肌着はチクチクしない刺激の少ないものにしましょう。④かゆい時に皮膚をかくと症状がひどくなります。⑤アルコールや香辛料など摂取すると体が温まりかゆみがひどくなります。

●皮脂欠乏症の治療の基本は保湿剤を塗ることです。症状を悪化させないように早めに保湿剤を塗ることが大切です。

●保湿剤の使用量は、軟膏やクリームなら人差し指の先端から1つ目の関節まで伸ばした量、ローションなら1円玉くらいの量が約0.5gとなり目安となります。塗り方は、適度な量を皮膚がテカる程度に塗ります。すりこむように伸ばすとそこには保湿剤が無くなり効果が無くなります。

●保湿剤は保湿性の維持や刺激の少なさからヒルドイドなどのヘパリン類似物質が使いやすいですが、ヘパリン類似物質以外にも保湿剤はいろいろあります。また、その剤型や容器の大きさなどにより使いやすさに違いがあります。かゆみが気になる患者様は、症状の程度や症状が発現している部位に適した正しい保湿剤を使い、乾燥荒れ肌を治すために近くの皮膚科の先生に相談してみて下さい。