慢性便秘症診療ガイドラインと腸内細菌・糞便移植

今回は慢性便秘症、糞便移植についての講演でした。

<慢性便秘症>

●糞便は80%が水分、20%が固形物で構成されています。固形物は1/3が食物残差、1/3が脱落した腸の細胞+ミネラル+胆汁、残り1/3が腸内細菌です。

●腸内細菌の構成は、善玉:悪玉:日和見=2:1:7と言われています。

●生まれたばかりの赤ちゃんには腸内細菌はおらず、乳幼児期より徐々に増えてきます。

●乳児期の腸内細菌は①人工分娩 or 自然分娩、②母乳 or ミルク、③抗生剤の反復投与を行ったかどうかにより差が出て来ます。

●腸内細菌の働きは、①エネルギー源の供給、②ビタミン供給、③体内の免疫細胞の増殖・分化・成熟化です。

●善玉菌を増やすには、①発酵食品を摂る、②食物繊維を摂る、また、偏った食事や抗生剤は摂りすぎると善玉菌が減ります。

●口腔内細菌が糞便中に含まれていることがあり、大腸がん、クローン病、潰瘍性大腸炎、などと関係していると言われています。

●慢性便秘症の保存的治療として、①生活習慣の改善(食事、運動、飲酒、睡眠)、②内服薬による治療、③バイオフィードバック療法(肛門周辺の筋肉および正しいいきみ方を再訓練する器具の使用)、④外用薬による治療(坐剤、浣腸)、⑤摘便があります

●「慢性便秘症ガイドライン」の中で、質の高いエビデンスで強く推奨されている内服薬は、①上皮機能変容薬(例:アミテイーザ)、②浸透圧性下剤(例:酸化マグネシウム・カマ)のみです。

●満足度の高い排便のためには、硬便や下痢便ではなく正常便を目指して治療することが大切です。

●和式トイレでの姿勢や洋式トイレに座って前かがみになる姿勢が適切な排便姿勢です。

●便秘症の定義は「糞便を十分かつ快適に排出出来ない」というです。これらの症状をお持ちの患者様は、かかりつけの内科の先生に相談してみて下さい。

<糞便移植>

●現在糞便移植が有効であると言われているのは、クロストリジウムデイフィシル腸炎だけです。

●最近クローン病や潰瘍性大腸炎にも有効であったいう報告もあります。

●糞便移植療法は、安全性が確認できた便を使用します。投与方法は、①大腸内視鏡を使用して鉗子孔から消化管に散布、②カプセル剤として内服、③浣腸用具を使用して移植が行われます。

●現在日本では、この糞便移植は一部の病院のみで実施されており、保険診療で行うことは出来ません。