秋冬の流行に向けて新型コロナウイルス感染症とその周辺

医療従事者向けの新型コロナウイルス感染症に関する講習会が小樽で開催されました。これから秋冬に向けて参考になることを簡単に書きます。

<まとめ>

❶致命率と基本再生産数という指標からみると、新型コロナウイルス感染症は季節性インフルエンザとおなじ分類ですが、楽観できる病気ではない。

❷新型コロナウイルス感染症と風邪症状の違いは、1:経過の長さ、2:味覚・臭覚異常、3:接触歴ですが、区別するのは難しい。

❸ウイルスの侵入経路である目・鼻・口をシッカリ防護することが大切である。

❹今後は家庭内感染のリスクを減らすことが大切であり、特にハイリスク者のいる2世帯以上で暮らす家庭での早期診断への受診・検査体制と高齢者からの隔離が大切

❺新型コロナウイルス感染症と季節性インフルエンザとの同時流行に関しては、今年のインフルエンザの流行は過去の流行ほどは起こらないと思われるが、楽観はできない。

 

●東京と札幌の比較

冬~春の東京と札幌の感染者数のデーターから、札幌は東京のちょうど2週間遅れで感染者数のピークが来ていることが分かる

●致命率(致死率)と基本再生産数(1人から何人にうつすか)に着目すると

①この2つのポイントから見ると新型コロナウイルスは季節性インフルエンザと同じ分類の感染症ということが分かる。

②季節性インフルエンザの致命率は0.1%以下で、全世界で年間約29万人~65万人が亡くなっている。

③北海道大学の西浦先生が算出した新型コロナウイルスの致命率は0.3~0.6%と推測され、全世界で新型コロナウイルスにより約200万人の死者が出ると推測されている。

④札幌では、4月~7月の致死率は7.4%だが、7月~8月は0.3%に減り致死率96%減となっている。ただし、70歳以上の高齢者の致死率は全体の3~7倍であり、高齢者・基礎疾患のある患者様には死ぬ病気で、楽観できる病気ではない。

●新型コロナウイルス感染症と風邪との違い(新型コロナウイルスの典型的な臨床経過)

①経過が長い(5~7日以上)②味覚・臭覚異常が発現することが多い③接触歴がある。④只、このような臨床経過の違いが見られることがあるが、ほとんどの患者様で区別をすることは難しい。

●感染しないために

①ウイルスの侵入は顔の粘膜(眼・鼻・口)から起こるため、防護具でこの3ヶ所を守り、この3ヶ所を触らない。

②体液(血液、排泄物、喀痰や膿)には感染性がある。

③損傷のある皮膚からはウイルスが侵入する可能性がある。

●秋冬のこれからに向けて

①医療機関や高齢者施設での対策強化継続は必須だが、今後は家庭内感染のリスクを減らすことが大切。特にハイリスク者(高齢者や基礎疾患を持っている患者様)のいる2世帯以上で暮らす家庭での早期診断への受診・検査体制と高齢者からの隔離が大切。

△中国での追跡調査から、感染リスクは家庭内での接触が最もリスクが高い。

△健常人や小児は感染しても重症化は低いが、高齢者がいる家庭では重症患者様が出やすい。

②北海道の徹底されていない気密性の高さが大きな弱点になる。積極的な換気を行う事が大切。

△今年の冬は寒いと予想されています。防寒具をしっかり身に着けて換気を。

③インフルエンザとの同時流行は?

△今年の南半球(オーストラリア)でのインフルエンザの流行は低かった。南半球での流行が北半球での流行の目安となる。

△世界人口の92%を占める北半球が、コロナとインフルエンザが活発化する冬をこれから迎えます。過去ほど今年はインフルエンザの流行は起こらないが、南半球の流行よりは大きいと考えられる。

④冬の季節性、人が動きが活発になった、まだ感染者が少ない(ワクチンがまだ無い)、致死率の減少による気の緩みなど見られるが、この秋冬の対策を油断せず実行することが大切である。

☆高齢者施設・複数箇所同時発生の備える。

☆2世帯以上の家族のいる患者様の早期診断体制が大切。